「いつものパン」があなたを殺す
なんとも衝撃的なタイトルの本。
少し前からグルテンフリーが流行っているが、本書も一応そのたぐいの本である。
一応、といった理由は後述する。
本書は他の本よりかなり主張が激しい。
パンは脳の働きを鈍くする、あたりまでは日本でグルテンフリーブームの火付け役になったといってもいい『ジョコビッチの生まれ変わる食事』にも似たようなことが書かれているからいいだろう。
本書はそれのみならず、脳疾患はパンのせいで生じている、といっている。
というか、タイトルは『「いつものパン」があなたを殺す』だが、実際のところ本書はパンだとかグルテンだとかのみならず、炭水化物(種類を問わず)をとることは体に毒だといっている。つまり著者のディビットに言わせれば米もフルーツもダメなのである。
パンは、グルテンは、体に良くないよ、という話をしていたかと思えば、気づいたら炭水化物をとることはよくないという話になっていて、炭水化物をとらない生活をしよう!という話が展開されている。
割と滅茶苦茶な話に聞こえるのだが、それをそこそこ説得力のある感じにしてしまうのがデイビットの凄いところだと思う。
彼の話をざっくりまとめると、こんな感じである。
昔の人類は炭水化物をとれるのは一年の内短期間だけで、一年中穀物やフルーツが食べられるようになったのは最近の話。
だから、人類の体は一年中炭水化物を摂取し続けても大丈夫なようにはできてない。
なので、炭水化物をとり続けると体が害されて、それが脳疾患に繋がる。
と、いうことらしい。
彼に言わせれば昔の人はエネルギー源をほとんど脂肪に頼っていたため、炭水化物から脂肪にエネルギー源を切り替えるべきだ、とのこと。
そして、油を使う際には良質な油を使うこと、といっている。
具体的には、今流行のエキストラバージンオリーブオイル、ココナツオイルといった油だ。
まぁ、要はディビットの主張はケトン体ダイエット(ご存じない方はググっていただければ。僕が説明するよりよほど詳しいサイトがあります。)に近いものなのだが、かなり極端な意見だなぁ、という印象。
そして、効果あるなしに関わらず、これを実践するのは絶対無理だと思った。
本書にはデイビット案を実践した場合の一週間の食事例が載っているのだが、そのうちの一つがこれである。
”・朝食:アボカド半分にオリーブオイルをたらし、ポーチド・エッグ二つにサルサをかけて。
・昼食:レモン・チキンと、ハーブ・サラダのバルサミコ酢ビネグレットソースがけ。
・夕食:サーモンのソテー、マッシュルーム添えと、野菜のロースト
・デザート:チョコレート・トリュフ”
~本書349ページより~
「はい!無理!!」というのが多くの人の素直な感想だと思う。
まず朝からこんなものを作ってる暇はないし、昼は社食・学食・コンビニ弁当が大多数だろうし、夜も毎日作っている余裕はない。
まぁ、全部手料理でなければならない、とは言われていないものの、炭水化物抜き(低糖のフルーツはOK)、加工食品を控える、いい油を使う、野菜をとる、という条件を満たそうとするとほぼ全部手料理になるよねっていう感じだ。
内容の真偽はともかく、なるほどなぁと思わせる本ではあったが、クセが強すぎるなぁと思った。
★こんな人に読んで欲しい
・グルテンフリーを成功させたいけどうまくいってない人
・炭水化物ダイエットがうまくいかない人
・ケトン体ダイエットに興味がある人
ここまで散々主張が強い本だと書いてきたが、上記の人にとっては読む価値のある本だと思う。
というのも、本書では炭水化物・グルテンがボロクソに叩かれているので、グルテンフリーや炭水化物ダイエットにチャレンジしている人ならば、読むことによって「炭水化物・グルテンを減らそう!」という気になれるのではいかと思うからだ。
また、ケトン体ダイエットをする上では参考になることが書かれているので、ケトン体ダイエットをしている人も読むといいのではないかと思う。
★本書を読んだ人にオススメの本
本書を読んで「栄養学って実践が難しい!これは無理だ。」と思ってしまった方には、本書よりも程度の軽い『カラダをもっと強くする 食事&トレーニング大全』をオススメしたい。この本には本書ほどストイックにならなくても健康的な食事を試すことのできるエッセンスが含まれている。
bookintroduction.hatenablog.com
また、グルテンフリーがいい、という方には『ジョコビッチの生まれ変わる食事』がオススメだ。ジョコビッチのグルテンフリーもそこそこ難易度があるが、本書ほどではないので、グルテンフリーによる恩恵を期待する方は読んでみるといいと思う。
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