ヒラリー 政治信条から知られざる素顔まで
アメリカ合衆国の次期大統領候補、民主党のヒラリー・クリントン氏。
彼女が大統領となれば、合衆国初の女性大統領の誕生となるそうだ。
本書は、エッセイストの岸本裕紀子さんが様々な面からヒラリーを描いた本だ。
訳本かと思っていたら岸本さんの著作でびっくりである。
それだけ、本書にはヒラリーのことが詳しく書かれている。
本書では、”ヒラリーについて、
・2016年の大統領選の見どころ
・人生の歩み
・選挙戦で抱える問題点
・2008年大統領選においての敗因分析
・弱さや複雑さを含めた人間的な側面
・おしゃれやヘアスタイル
・夫ビル・クリントンとの関係
・女性の権利とアメリカにおける女性大統領誕生の意味
・ヒラリーの政治信条や大統領選で掲げた政策
と、9つの点から考察している。”
~本書3ページより~
今アメリカ国内外で注目の集まるヒラリー・クリントンについて日本人が知りたいことをすべて描いた本である。
僕は本書を読むまではヒラリーについて、
・クリントン元大統領の嫁
・優秀な弁護士
くらいのことしか知らなかったのだが、本書を読んでヒラリーのことを深く知ることができた。
例えば、ヒラリーはずっと若手候補と戦ってきたこと。
前回の民主党の大統領選候補者選びで戦ったオバマがヒラリーよりも10歳以上若かったことのみならず、上院議員に初めて立候補した時からずっと、ヒラリーの対戦相手は自分より一回り以上若い男性の政治家と決まっているそうだ。
相手が若い政治家だと、相手は「過去を懐かしむか、未来を見つめるか」という構図で戦いを仕掛けてくるため、ヒラリーとしては戦いを挑まれる経験豊富な側にされ、チャレンジする側に立てないらしい。
とすると今回の大統領選はそのパターンから抜け出せた、ということだろうか。
民主党内で候補者指名を争ったバーニー・サンダース上院議員はヒラリーより年上だし、共和党の候補者にドナルド・トランプが指名されれば大統領選も年上のトランプと争うことになる。
トランプは政治家ではないし、傍若無人な発言をするアウトサイダーなので、「過去を懐かしむか、未来を見つめるか」というヒラリーがこれまで使われてきた対立軸は使えないし、チャレンジする側といえるかと言われたらYesとは言えないけれども。
面白いのが、岸本さんが本書を執筆した時点(2015年11月)の時点では、岸本さんはトランプは人気はあるけれども最有力候補ではないと踏んでいたこと。
流石にトランプ旋風がここまで続くとは踏んでいなかったのだろう。
岸本さんも、共和党議員のマルコ・ルビオかテッド・クルーズの40代半ばの二人のどちらかが指名されると踏んで上述の話を書いたに違いない。
このように、本書原稿執筆時から半年しかたってないものの、大統領選の状況は岸本さんが予測したものと異なっている部分はある。しかし、民主党では読み通りヒラリーが指名確実になっている。
今後大統領になる可能性のあるヒラリーを知るにはいい一冊だと思う。
★こんな人に読んで欲しい
・大統領選に興味のある人
・アメリカ発の女性大統領になるかもしれないヒラリーのことを知りたい人
ヒラリー・クリントンについて書かれた本は日本でも何冊か出版されているが、本書は出版されたのが今年であり、タイムリーな記述が多い。
読めば連日ニュースで報道される大統領選についてさらに興味を持てることだろう。