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読書のはじまり

最近読書はしてますか?読書はしたいけれど、面白い本を探している時間はない。そんな人が、ここで読みたい本を見つけてくれたら嬉しいです

現代語訳 武士道

文化論

 

 

 

5000円札の人にして近代日本を代表する学者、新渡戸稲造の代表作。

 
書店でふと目について、「そういえば名前は知っているけど読んだことはないなぁ」と思い、「これここでスルーしたら読まないやつだ」と思い手に取った。
 
 
まず、本書はどんな本か。
これを知らない人も多いだろう。
本書は、ただ単に「外国人に向けて武士道とはなんたるかを解説した本」ではない。「武士道を通じて、日本的思考の枠組みを外国人に示した本」なのである。
つまり、武士道という一つの日本文化の解説ではなく、日本文化全体の解説本なのである。
 
そもそも新渡戸さんはなぜ本書を書こうと思ったのか。
本書の序章によれば、新渡戸が尊敬する教授、ド・ラブレー氏と話した際に、「日本の学校では宗教教育がないのにどうやって道徳教育を授けているのか」と問われうまいことこたえられなかったこと、及び新渡戸の妻メアリー・エルキントン(新渡戸は国際結婚している)から、日本独特の考え方や習慣がなぜ日本では一般的なのか、と問われてそれに答えようとしたことがきっかけであるといっている。
 
 
確かに、今も昔も日本の学校では宗教教育は行われないし(一部の私立除く)、小学校の「道徳」の時間も道徳教育のためのものとは言い難い。
日本の道徳教育は、今も昔ももっぱら家庭内で行われているといえるだろう。
 
本書は、封建制が崩壊し、封建制に従うものであった武士道も封建制と共に滅びつつある、という立場をとりつつも、武士道が今なお日本人の心の中に生きている、という観点から武士道を外国人に分かりやすく示した一冊だ。
 
当時世界の先進国の仲間入りをしようとしていた日本の文化を西洋人が知る上で、本書は大きな役割を果たしたのではないかと思う。
 
 
本書はアメリカ、ヨーロッパで大ベストセラーとなったそうだ。
いくら当時日本が伸びてきていたとはいえ、アメリカでうけてヨーロッパ翻訳出版されるほどかなぁ、と思っていたが、読んで何となく理由がわかった気がする。
 
新渡戸さんは日本の制度を、海外の制度・歴史に引き付けて説明したり、古代中国やヨーロッパの思想家や学者の言葉を引用して、武士道が決して日本の特殊な文化ではなく、自分たちの持つ道徳と近いものであることのように説明しているのだ。
この説明の仕方は、日本という東洋の小国の、武士道という外国人にとっては訳の分からないものを理解してもらうのに非常に有効な手段だと思う。
 
この手法は流石だ。
自分も、外国の方に日本独特のものを説明するときは新渡戸さんのこの手法を使わせていただくことにしようと思った。
 
 
 
そして、肝心の「本書は今読んでも面白いのか」という点に関してだが、これは正直微妙である。
確かに、現代語訳がされていて文章として読みづらい、ということはない。
が、いかんせんただひたすらに武士道を言葉で説明しているだけなので、読み物として面白いかといわれると、正直面白くない。
しかし、本書は「相手が自分の説明したいものについて全く知らない時にどうやって相手に伝わるようにそれを説明するのか」という観点から見ると、結構学ぶところがあって為になるのである。
微妙、といったのはそんなわけだ。
 
 
 
★こんな人に読んで欲しい
 
・日本の名著を読みたい人
・人にものを説明する方法を知りたい人
 
上述の通り、本書を読み物としての面白さを期待して読むのはオススメしない。
しかし、それ以外の目的で読む、特に相手の知らないことをいかに説明するか、という技法を学ぶために読むならば、本書が日本でも著名な一冊である以上、読んで損はないだろう。