まんがと図解でわかる アドラー心理学式 折れない心の作り方
”性格は生まれつき与えられたものではない”
~アドラーの著書『Menschenkenntnis』より~
岸見一郎、古賀史健さんの『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』が売れてますね。
いわゆる自己啓発本の一種なのだが、本書が平積みになっていない書店はない、というくらいの人気っぷりだ。ふらっとよった本屋さんで赤と青のカバーの本が対になっておかれているのを見たことがある人も多いと思う、それだ。
ベストセラーになる自己啓発本はずっと平積みになっているイメージがある。
自己啓発本は自己啓発ブームもあってものすごい数の本が出ているが、その中でずっと平積みで置かれる状態を維持しているのは営業がどうとかいうよりも単純に売れているんだと思う。
これらの本は、アルフレッド・アドラーの思想を物語形式で紹介した一冊である。
これらの本が出てから日本でもアドラーの名前が有名になったが、アドラーはフロイト、ユングと並んで心理学の三大巨頭といわれるほどの方で、日本で名が知られていなかっただけで世界的には元々著名人だったそうである。
というか、アドラー心理学は発表当時からアメリカではフロイトの数十倍受け入れられていたそうなのだ。
例えば、1927年にアメリカで刊行された著書『人間知の心理学』という本は6か月で10万部も売れたのに対して、フロイトの著書『夢判断』は1910年から1932年の22年間にたった1万7000部しか売れなかったらしい。
これを聞くとなぜ今まで日本でアドラーがフロイト、ユングに比べて知名度が低かったのかが謎でしょうがない。
本書は、最近日本でも一躍有名になったアドラー心理学を「ストレスに負けない心を作る」という観点から紹介しているムック本。
全ページの半分ちょいくらいを漫画と図解が占めているので、活字の本が苦手な人や、文章だけではいまいちアドラー心理学をつかみかねていた人も安心して読める一冊だ。
構成としては漫画→説明→漫画→説明、の繰り返し。
漫画のストーリーは、「主人公の明日香が何をやっても駄目な自分を嘆いて悲観的になってしまう性格をアドラー心理学に出会うことによって変えていく」というまぁどうでもいい感じなのだが(笑)、漫画の後に説明が来ることで、説明の具体例は漫画で言うところのこの場面だよ、という書き方がされているので、読んでいて非常にわかりやすい。
理論を具体例でイメージできるのは、本書の構成ならではだと思う。
アドラーは一貫してポジティブな生き方を提唱しており、その内容は多岐にわたるが、その中から僕がこれは!と思ったものをひとつここで紹介したい。
”私が成功したのは、劣っているという感覚に刺激されたからにほかなりません”
アドラーは劣等感そのものは悪くない、という考えを持っていた。
彼は、劣等感は人間が生きる上で必然的なものだと考えていたようだ。
劣等感を抱くのを必然とした上で、そこからどう対処するかの分かれ道が重要、といっている。
つまり、劣等感を理由に人生の課題から逃げてしまうか、それとも劣等感をバネに努力するかで成功するか否かが分かれてくる、ということだ。
例えば、イケメンでないからといってモテることをあきらめてしまうか、イケメンでないことは認めたうえで、ルックス以外の取柄をもってモテよう、と考えるかどうか、といった具合だ。
要はポジティブシンキングなのだが、ネガティブになってしまう状況をいかにポジティブに持っていくか、という点が心理学の観点から語られている。
また、後半では自分一人の生き方のみならず、他者との関わり方も示していて、これはこれでまた「なるほどなぁ」と思わせる内容となっている。
自分のことに不安があったり、他者との関わり方に悩みを抱えている人が多い現代い日本でアドラー心理学が最近注目されているのは当然のことだなぁ、と感じた。
★こんな人に読んで欲しい
・『嫌われる勇気』のブームに乗り遅れて今更読むのはちょっと恥ずかしいと感じる人
・活字本は無理だけどアドラー心理学に興味のある人
・性格をポジティブに変えたいと思っている人
・アドラー心理学に興味はあるけど時間のあまりない人
本書は漫画と図解が多いムック本なので、活字嫌いの人でも読めると思うし、説明の一つ一つが細かくわかれているため忙しい人でも隙間時間にひとつづつ読める。
そのため、その他のアドラー心理学本に手が出せなかった人でも読みやすい一冊だと思う。