読書のはじまり

最近読書はしてますか?読書はしたいけれど、面白い本を探している時間はない。そんな人が、ここで読みたい本を見つけてくれたら嬉しいです

ある日突然40億円の借金を背負う それでも人生はなんとかなる。

 

 

 

タイトルのインパクトにつられて手に取ったこの本。

 

40億も一気に借金を抱えるなんて、経営者の親が多額の借金抱えて死んだのを相続しちゃったとかそんなところかなぁと思っていたら、案の定だった。

 

著者の湯澤剛さんはキリンビールに勤め、順風満帆な生活を送っていたものの、父の死によって40億円もの負債を抱えた会社を引き継ぐこととなってしまう。

このとき、湯澤さんは父の会社の連帯保証人にはなっていなかったため、相続放棄して会社を清算してしまう、という選択肢もあったし、実際に湯澤さんはその選択肢をとろうとしていた。

しかし、自分が会社を引き継がないと母に迷惑をかける上、会社で働いている人たちが路頭に迷ってしまう、との思いから、結局は会社を引き継ぐこととなる。

 

本書は、そんな流れで父の借金と倒産寸前の会社を引き継いだ湯澤さんが、16年かけて借金をほぼ完済し、会社を再生する過程をつづったものである。

 

 

借金40億、といきなり言われると額が大きすぎてそれがどのくらいのものなのか実感がわかないが、湯澤さんもそうだったらしい。額がサラリーマンだった湯澤さんの想像できる「大きなお金」のレベルをはるかに超えていた、と語っている。

 

会社における負債額の危なさは額そのものでなく、月商の何倍の負債があるか、という点であるらしい。湯澤さんの会社、「湯佐和」は年商20億円の会社であったから、月商に直すと1.66億円くらいだ。

一般的に「経営において、月商の3ヶ月分以上の負債があると危ない」といわれていることからすれば、湯佐和の負債が40億円、ということがどれほど危険な状態にあるかわかるだろう。

 

自分だったら絶対に相続しないで会社をたたむと思う。

取引先の連鎖倒産とか銀行に迷惑がかかるとか考えている場合ではない。

湯澤さんはこれほどの負債を抱えている会社をキャリアをなげうってまで継ごうと決めたあたり、ただものではないですね。

 

 

 

会社を継いでから借金がほぼなくなった2015年までの16年間は、それはもう壮絶なものだったようだ。

メガバンクは血も涙もない対応をする、部下は尖った人が多くキリンに努めていた時の常識は通用しない、ノロウイルスや火事といった店舗での問題も次々発生する、といった悩み事が次々に発生し、自分の人生はもう終わったと思ったといっている。

 

しかし、湯澤さんは負債の返済に成功した。なぜか。

それは、ターゲットを絞る経営戦略と、湯澤さんが社員一人一人と向き合ったことにある。

湯佐和は地域密着型の居酒屋なのだが、湯澤さんは中高年男性客にターゲットを絞り、「中高年男性客の日常使い」の店としては他の店に負けないように資源を集中した。あえて間口を広げないことで、ターゲット層の取り合いに勝ち、これが湯佐和の再生につながった。

もう一つは、社員70人一人一人の情報ファイルを作るほどに社員とコミュニケーションをとり、社長の湯澤さんに話を持っていきやすい環境、自分は社長の直属の部下だという意識を持たせたことにある。

これはなかなかできることではないと思う。70人というと学校のクラス以上だ。それを全員把握するなど並大抵のことではない。

 

このような努力によって年約2億のペースで負債を返済した湯澤さんは、本書を「世の中突然どうにもならないような状況に放り込まれることもあるけれども、状況に対して受け身にならず、状況に対する自分の受け止め方を自分で選択することによって必ず道は開ける」旨の言葉で締めくくっている。

 

普通の人がいっても「ふぅん」って感じだが、40億の借金を返済した男が言うと重みが違う言葉だと感じた。

 

”状況に自分がコントロールされるのではなく、状況に対する自分の受け止め方を、自分で選択するのである。

主体的に生きること、それが道を拓く。

「朝の来ない夜はない」

このたったひとつの信念が、これからも私の支えになっていくだろう。

この信念は、私が逆境の中でつかんだ宝物だ。”

~本書220,221ページより~

 

 

 

★こんな人に読んで欲しい

 

・何かをあきらめそうになっている人

・今まずい状況にある人

・大借金を抱えている状況からの復活劇が読みたい人

 

本書は不幸な男が人生逆転する、というたぐいの話ではない。

不幸な男が何とかなるまでに復活する過程をつづった話だ。

つまり、マイナスがゼロになっただけなのでサクセスストーリーではない。

そのため、サクセスストーリーは苦手、という人でもとっつきやすいと思うし、今マイナスの状況にいる人でも、この本を読んで「あきらめるのは、まだ早い」と思うことができると思う。