絵師で彩る世界の名画
本屋で見かけた時、「うわぁ、なんだこの本は・・・・・」と思ったのが正直な第一印象。
まず絵師って何?っていう人のために軽く説明すると、「絵師」とは昔は浮世絵画家とかのことを指したらしいのだが、今では一般に漫画、アニメやゲーム風の絵を描くイラストレーターさんのことをいう。
本書は、そんな現代の絵師さんが世界の名画をアレンジして描いたものをまとめた本である。
と、言うとなんだそれは??ってなってしまうと思うのだが、本書の狙いは絵師さんが名画を描いたらこんな風になったよっていうものであって、絵師は名画を越えるんだ!っていうものではないらしい。
世界の名画を自分なりに描くことは絵を描く練習としていいことだから、みんなもやってみるといいよ、例えばこんな風にね、っていう、絵を描く人向けに出された本だそうだ。
本書では絵師さん達の作品を「名画の模写」といっているが、「模写」は他人の作品を忠実に再現することをいうので、絵師さん達がやっているのは模写ではなくアレンジだと思う。
名画をアレンジして描くことが絵の上達につながる、と本書が語る理由は3つ。
1,構図を模範にする・・・アングルや人物の配置を手本とする
2,色彩を真似る・・・色使いによる画面の魅せ方を取り入れる
3,モチーフを意識する・・・テーマ性を持って作品を整える
これはなるほどなぁと思った。
学校の美術の授業でも名画を見せられて、これこれこういうところがいいんです!とかいう説明を聞いた記憶があるので、それを真似て描くことは名画の技術を学ぶことにつながる、というのは納得した。
本書の構成は、見開きの左のページに絵師さんのアレンジした名画、右のページに原画をかなり縮小したものと、名画の軽い説明が載っている、という形。
絵師の絵と原画を見比べつつ、原画について学べる作りになっている。
二つの絵を見比べてみると、これがまぁ違う違う。
ほとんどの絵でおっさんが美男子になって、ふくよかなおばちゃんがスリムな美少女になっている。また、絵全体として見たときにファンタジックな仕上がりになっているものがやたら多い。
ファンタジックな絵になってるのはその絵師さんの普段の世界観で名画をアレンジしてるから別にいいのかなぁと思うけど、登場人物全員美男美女である必要はないだろ!というのが正直な感想。
おっさんやおばちゃんが立っているから絵の魅力が出るのであって、それを美男美女にしちゃったら絵にするようなものではなくなってしまわない?と思ってしまった。
美男美女でアレンジするならもともと原画が美男美女を描いている作品を選べばよかったわけだし。
絵師さんのコメントは載ってないので、どういう意図でアレンジを加えたのかがわからないためなんとも言えないが、なんだか「萌え」とかそっちのほうに媚びを売りすぎているなぁという印象を受けた。
名画のアレンジというコンセプト自体は悪くないだけに、ちょっと残念だった。
あと、タイトルが個人的にはイマイチだ。
絵師で彩る、というと絵師が名画に上からの立場で手を加えるような印象を受けてしまうのでなんだかなぁ、と思ってしまった。
絵師が描く、とかのほうが良かったのではないか。
★こんな人に読んで欲しい
・絵を上達させたい人
・好きな絵師さんの絵が載っているのを見たい人
上述のように気になる点はあるものの、「絵の練習として名画を手本にして自分で書いてみよう」というコンセプト自体はよいと思うし、名画を真似ることは絵の上達につながると思う。
なので、絵を描くことが好きな人は絵師さんのアレンジを見ながら、自分だったらどうアレンジするか、等考えることができてよいのではないか。