読書のはじまり

最近読書はしてますか?読書はしたいけれど、面白い本を探している時間はない。そんな人が、ここで読みたい本を見つけてくれたら嬉しいです

福翁自伝

 

 

"イヤかわいそうに、いま食ったのはタイでもなんでもない、中津屋敷でもらったフグのみそづけだ。食物の消化時間はたいてい知っているだろう。いま吐剤を飲んでも無益だ。"
 ~第四章 緒方の塾風より~


みなさんは、福沢諭吉にどんなイメージを持っているだろうか?

・勤勉家
・先進的な考えの持ち主
・居合の達人
・幕末を代表する学者
・一万円札
慶應義塾大学の創立者
こんなところだろうか。

でも、彼にはこんな一面もある。
・貧乏な学生時代
・今やったら犯罪になることも平気でやっている
・居合はできても人は切れない
・大酒飲み
・愛煙家



福沢諭吉をあまり知らない人にとっては、一般的なイメージからかけ離れているこれらの面があることは意外かもしれない。

冒頭の一節も、福沢が友人をだましてフグを食べさせた、というエピソードでの福沢の台詞である。
もっとも、これは流石にいたずらにしては危なかったと後々反省しているが。

 

本書は、そんな福沢諭吉の意外な一面、魅力を余すところなく詰め込んだ一冊である。
 本書の最大の特徴は、本書は福沢自身が口述し、それを速記官に速記させ、その原稿用紙を福沢が訂正加筆し、、、という作業を繰り返して書かれた点にある。

そして、速記者曰く、福沢は口述する際にはありふれた年表のようなものを持っていただけであり、カンペや原稿のようなものは持っていなかったそうなのである。

しかも、口述する中身について知人に問い合わせたり、取材、調査を行うというのも、以下の理由から難しかったと思われる。

福沢が本書を執筆しはじめたのは明治三十年、福沢64歳の頃であるから、両親は他界していていない。また、江戸、明治の時代であるから、アルバムや卒業文集のようなものもない。加えて言えば、今ほど通信手段が発達していないから、旧知のものに尋ねるというのも容易なことではないだろう。

つまり、本書に書かれている数十年分の福沢の軌跡、及び福沢が生きてきた時代の流れを、福沢はほとんど記憶していたということである。

 

これはすごい。

 

例えば僕が幼少の頃に何やってたかとか自伝で書こうと思ったら、まぁアルバム引っ張り出すなり親に聞くなりしなければ間違いなく書けない。

しかも、それでもやっと、という感じだと思う。

それを平然とやってのけるあたり、さすが幕末随一の学者、といったところである。

 

 

 

日本を代表する偉人の一人の自伝であり、かつ読んで面白い内容となっている本書、読んで損はない。



PS  そういえば、少し前に慶應義塾大学の学生がマンションから卵を大量に落として事件となったことがありましたね。あれは中々びっくりな事件でしたが、創立者の福沢は橋の上から船遊びをしている金持ちに向かって小皿を投げつける男なので、卵を落とすぐらいは福沢的には全然セーフなのではないでしょうか(笑)



 
★こんな人に読んでほしい

慶應

福沢諭吉を知りたい人

・真面目すぎると言われる人

 

慶應生はまず絶対でしょう(笑)是非とも読んでほしい。

酒を飲み倒し、はっちゃけ、やるときはしっかり勉強するという今の学生とそう変わらない青春を送っていた福沢の姿を知ることで、より学校に愛着が沸くのではないか。

 

真面目すぎる、といわれる人にも一読をお勧めしたい。

福沢のような高名な学者であっても、ただ真面目なだけではなかった。

それを知ることで、生き方が変わることがあっても面白いと思う。